でもこの曲は、ある意味で剥製です。
きっとこれからも、そのまま変わらずに受け継がれていくでしょう。
僕はこの曲に、梅雨の景色を感じます。水に濡れた新緑の緑を感じます。おそらく、これからの時期にぴったりの曲です。
僕はこの曲を、大学四年間の集大成として、卒論のテーマにしました。
そして今回は、この曲の“生きたままの状態”を、皆さんに聴いてもらいたいのです。
それがコチラ。
作曲者である上田現本人が、おそらくライブで生前最後に歌ったものです。
彼を囲む演奏メンバーは、彼のソロ活動を支えたELEのメンバーで、録音された元ちとせのワダツミの木も、彼らの演奏です。実は上田現さんはこの時闘病中で、すでに死期を悟っていたそうですが、ギターの奥村大さん曰く、“歌も演奏も生き物みたいだった”と言っていたのが印象的です。
そして彼の死後、彼がミュージシャンとしてデビューしたバンド、レピッシュのメンバーがカバーしています。おそらくこのバージョンを耳にした人は、そう多くないかもしれません。ベースのTatsuさんの、“現ちゃん、レピッシュでワダツミやるとしたら、こんな感じだよね?”というコメントが、ファンを泣かせます。
僕は今、ひとつの事を感じています。
音楽とは、音符とやリズムを超えて何かを表現する事ができる時があると。
上田現さんは、奄美大島出身の元ちとせさんにこの楽曲を提供した時、彼女の事を“ユタ”と称しました。つまり、本人の表現ではなく、ただただメッセージを代弁する者を示します。
「ワダツミの木」のレコーディングの際、元ちとせさんに、一枚の絵を書いて伝えたそうです。
おそらく今の若い子はこの曲の存在を知らないかもしれません。この記事をきっかけに、少しでも多くに人が聴くきっかけになれば幸いです。
ご静聴、ありがとうございました。
ワダツミの木の花をはじめて見たとき涙が出ました
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